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多重債務の整理方法と自己破産の実態

クレジットやローンなどの借金のことを「債務」というが、一人で複数の金融機関やクレジット会社から借入れをしている人を「多重債務者」という。債務が多重化する原因にはいくつかある。最近の傾向では、①贅沢品や収入以上の買い物、②遊興費・飲食交際費、③生活費、④冠婚葬祭・傷病・出生などに関する出費、が主な原因となっている。とくに、生活費をやりくりするために債務多重化するという切実なものが、ここにきて増加する傾向にあり、このことはバブル経済崩壊後のここ数年間の長引く景気の停滞を反映していると考えられる。そのような債務を整理するには、次のようにいくつかの方法がある。

①自助努力(「入るを計って出ずるを制す」ことで債務整理する)
②他力援助(親戚や低利の金融機関からの借入れで債務整理す)
③任意整理(業者との話合いによる債務整理のことで、借金や利息をまけてもらい一括返済または分割返済する)
④調停による整理(簡易裁判所に申し立てて調停で債務整理する)
⑤訴訟による整理(債務の不存在確認訴訟や過払分返還請求訴訟で債務整理する)
⑥自己破産(地方裁判所に自己破産の申立てをして債務整理する)などである。

最後の自己破産は、多重債務者が債務から逃れる最終手段である。自己破産の申立てをするには、破産原因が存在していることが必要である。個人が行なう自己破産の破産原因としては、債務返済不能の状態にあるということが必要である(破産法126条1項)。つまり、自己破産の申立てをして、申立人が債務返済不能の状態であると裁判所に認められたときにはじめて、破産宣告の決定がなされるのである。では、自己破産をするとどうなるのか。

①財産の管理処分権の喪失(破産者は破産宣告時にもっていた財産を売買する権利を失い、財産の管理処分権は破産管財人に移る)
②自由の制限(説明義務:破産者は破産管財人や債権者集会の請求により破産に関して必要な説明義務を負う。居住制限:破産者は裁判所の許可なく転居や長期旅行など居住地を離れることができない。引致・監守:破産者は裁判所が必要と認めた場合には身体を拘束されたり、逃走や財産を隠したりこわしたりするおそれがある場合には監守を命じられることがある。通信の秘密制限:破産者向けの郵便物などは破産管財人に配達され、破産管財人は受け取った郵便物などを開披できる)
③公私の資格制限(公法上の資格制限:破産者は弁護士、公認会計士、公証人、司法書士、税理士、弁理士、宅地建物取引主任者などになることができない。ただし選挙権、被選挙権などの公民権は失わない。私法上の資格制限:破産者は後見人、後見監督人、保佐人、遺言執行者などになることができない。また、株式会社の取締役、監査役の退任事由となる)という三つの不利益が生じることになる。

一般的には、このような自己破産の増加はカード発行枚数の増加が原因していると思われているが、決してそのようなことはない。左図をみてもらえればわかるように、自己破産の増加はカード発行枚数の伸びを大きく上回っている。カードの発行枚数と自己破産は、直接は関係ないのである。