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カードで買わせた商品を8掛けで買い取る商売

最近、よく街角で「カードでお金」という看板を見かけるようになりました。なかには、「カードでお金」というプラカードを持って駅前に立っているサンドイッチマンまで登場しています。なんの意味だかよくわからないという人も多いでしょうが、つまり、これは手持ちのクレジットカードのショッピング枠で現金を立て替える商売のことです。これは多重債務者には、一瞬嬉しいサービスです。多重債務に陥っている人は、消費者金融数社で目いっぱい借りていますし、クレジットカードでもローンやキャッシングを頻繁に利用しているため、これ以上は借入れができないという状況にあることが多いのです。しかし、そうした人も「ショッピング枠はまだ真っ白のまま」ということがあります。この商売はそこに目をつけたわけです。ですから、サラ・クレ(無担保ローンの総称的呼び方)で借りすぎてもうクビが回らなくなった人には、ある意味で救いの神。

この資金を返済にあてれば、まだまだ自転車操業が可能になると考えて飛びつくのです。それにしても、この商売はどうやって成り立っているのでしょうか。ちょっと不思議です。カードのショッピング枠でお金を用立てるわけですから、担保になにを取るのでしょうか。実際に私は、山手線のターミナル駅前で看板を出している業者に行ってみました。それは、大通り沿いのディスカウント店でした。その店が副業として、「カードで現金」を用意する事業を行っているのです。店をのぞいてみると、店先には野菜や米、カップラーメンなどが安い価格で乱雑に並べられていました。「カードでお金がほしいのですが」というと、カードの受け付けは2階のカウンターでやっているとのことでした。さっそく暗い階段を上がっていくと、2階はサッカーボールやバットなどのスポーツ用品に靴、バッグなどのブランド品がところ狭しと並んでいました。

カウンターには中年の男性店員がいて、こう説明してくれました。「クレジットカードのショッピングの枠内で、まず買い物をしてもらいます。カードで買えるのはブランド品だけ。それを私どもが8掛け(80%)で買い取り、換金するわけです」店員は、クレジットカードなら、ほとんどのカードが使えると強調しました。つまり、こちらのクレジットカードで店のブランド品を買い、その商品を店が8掛けで買い取ってくれるというしくみです。たとえば、1万円のブランド品のバッグを買うと、店は8000円で買い取ってくれるというわけです。ディスカウント店と質屋が合体したような店といえばいいでしょうか。カードを利用した客は、そのまま現金を手にできるため喜びます。そのお金を消費者金融の返済にあてようと考えるからです。

一方、店側とすると、8掛けで買い取りますから、必ず2割の儲けが出るというわけです。しかも、この店では指定したブランド品のみを買わせています。おそらく本物のブランド品ではないと思われますが、それを売っては買い取り、売っては買い取るわけで、店内でグルグル回しているだけですから、元手はまったくかかりません。まさに、「濡れ手に粟」の商売です。最近は、こうした新手の買取屋が激増しています。もっとも一般的なスタイルは、ディスカウント店ではなく、金券ショップでクレジットカードを使って新幹線の回数券や商品券などを購入させて、それを7掛けから8掛けの現金で買い取るというものです。業者側は、買い取った回数券を金券ショップに持ち込んでまた現金に換えるというわけです。こちらは店を持たない分、手広く展開しており、しかも、「ヒット&ラン方式」で店を開いてはすぐに閉めるという商売をしているようです。

それにしても、気になるのはこれらの方法が法律に触れないかどうかです。法的にはどうでしょうか。ディスカウント店と質屋が合体したというと、新しいビジネスのようですが、実際のところは、商品を買い取るには古物商の資格が必要で、それを持っているわけでもなさそうです。ひょっとして詐欺罪に当たるのではないかという疑惑も浮かびますが、この点について、ある弁護士の見解はこうです。「まだ明確な判例もないため、非常に微妙な問題です。買取屋と利用客は『金銭消費貸借契約』ではなく、『売買契約』をしているにすぎません。これが直ちに『カード会社に対する詐欺・横領』に該当するとは断定できないでしょう」この弁護士はあいまいなことをいっていますが、私が思うにこれは、カード会社との契約において明らかな違反だと思います。

さらに、多重債務者がこのような買取屋を利用した際には、より大きなハンデが付くことを承知しておいたほうがいいでしょう。それは、自己破産したとき、場合によっては、破産法375条2号が適用される可能性があるからです。「破産宣告を遅延させる目的をもって著しく不利な条件で債務を負担したり、または信用取引で商品を購入し著しく不利な条件で処分した」と判断された場合には、破産の免責が受けられなくなることもあるのです。そうした最悪の状況に追い込まれないためにも十分な注意が必要です。しかも、利用者はその場で現金は手にできますが、当然、買い物代金はしっかり負債に上乗せされるため、さらに苦しい状況に追い込まれることになります。